
以前のエントリーで、通訳案内士試験の邦文試験について、ある人は「高校レベルでは到底対応できない」と書いたり、また別の人は「中学校の教科書を復習しただけで通った」とコメントしていたという事を書いたと思います。
この2人のコメントは一見相反しているようですが、実はそうではありません。どちらも通訳案内士試験の側面を端的に表していると言えます。2人の違いは、おそらく最初の方はきちんと対策を立てなかった為に準備に時間がかかり、また試験でも大変苦労したのだろうな、という事だけです。
具体的に最近の試験問題を検証しながら、2人のコメントの意味するところを見ていきましょう。以下の問いは、昨年度(2008年)の邦文試験(歴史)の最初の問題です。
Q.天正遣欧使節を派遣したキリシタン大名のひとりで、マードレ・デ・デウス号の事件ののち、切腹を命じられたのは誰か。

(1)伊達政宗 (2)有馬晴信 (3)蒲生氏郷 (4)黒田如水 (5)小西行長
歴史を専門に勉強したことのない人でマードレ・デ・デウス号事件を知っている人がどれだけいるかと問われれば、正直それほどいらっしゃらないだろうと思います(私も不勉強で知りませんでした)。事実、高校の教科書や参考書にはこの事件が載っていないものもありますし、あの山川の教科書でさえ扱いは小文字の参考程度だったと思います。
この問題自体は、天正遣欧使節を送ったキリシタン大名(有馬晴信、大友宗麟、大村純忠。まあ中学レベルでしょうか)を覚えていれば難なく答えられるのですが、設問の内容には高校の教科書もしくはそれ以上のレベルの内容が含まれる事がある例として挙げておきます。
ですが、試験はこういう問題ばかりではありません。別の問題を見てみましょう。同じく昨年の邦文試験(歴史)から、今度は最後の問題です。
Q.石川啄木の著作で、三行分けの散文的スタイルで知られる歌集を何というか。

(1)邪宗門 (2)智恵子抄 (3)一握の砂 (4)赤光 (5)みだれ髪
三行分けの散文的スタイル云々について知っているかどうかは別として、石川啄木の『一握の砂』は完全に小学校レベルです(大抵の小学社会の教科書に載っています)。ただ、知らなくても心配いりません。先程の例とは対照的に、小学校レベルの知識をつければ対応できる問題もあるんだ、という事を理解していただければ充分です。
さて、これらの事が何を意味しているのかは、想像に難くありません。
つまり、この試験で高得点を取ろうとすれば、かなり広範囲の知識(時として高校レベルを越えるレベル)が要求されますが、合格だけを目指すのであれば、中学校レベルの易しい問題を拾っていく事で充分対応できるという事です。以前にも書きましたが、通訳案内士試験は大学受験と違い、高得点を取れば取るほど有利になるということはありません。あなたの目標が、いかに短期間で全ての科目に合格するかという事であれば、以下のことを必ず肝に銘じておいて下さい。

極端な言い方をすれば、難しい問題ははじめから解かないと決めておけばいいのです。そんなレベルの範囲にまで手を広げるといくら時間があっても足りない事になり、他の科目の勉強もおろそかになります。たとえわからなくてもマークシートだからたまたま正解する事もあるだろうし、選択肢を絞る事ができれば正答率も上がります。なにより他の得点しやすいところで確実に稼げば、合格基準点に充分届きます。 ※1
では、得点のしやすい問題とは何でしょう。それについては、次のエントリーで詳しく説明したいと思います。
※1 こういうことを書くと必ず、「実際に通訳案内士として仕事をするなら、試験に出るぐらいの範囲の知識は最低でも全て網羅していなければ話にならない。だから、合格するだけの勉強しかしないなどというのはおかしい」、という人が出てきます。でも、そんな心配は無用です。実際の現場で、通訳案内士試験に出される程度の知識だけではいい案内などできるはずもありません。少なくとも案内する場所に関しては、かなり広範で深い知識が必要になります。でも、そういうのは取り扱う仕事にあわせて後からつければいいものですし、試験を実施する側もこの段階でそんな知識を求めてはいません。周りの人が何と言おうとも、まずは試験に合格することです。あくまでそれが第1歩で、それ以外の心配は通訳案内士になってからすればよいのです。通訳案内士試験に受かってないのにそういう事を言う人がいますが、そのようなアドバイスには特に気をつけてください。

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